本編

Final Operation「乾杯」

「はい!じゃあ採血しますねー。あっ!すいませぇぇん。
 しっかり刺さらなかったので、もう一回やりまぁす。」



「相変わらずリオナちゃん。採血下手くそだねー・・・」



「すいませぇん。」



大学を卒業後、看護師として、常磐公平が院長を勤める
「平和病院」で働き始め早2年目のリオナ。



2年目だが周りからは新人扱いをされている。
採血が下手くそなだけではなく、仕事でのミスがとても多く、おっちょこちょい。



だが、看護の仕事が大好きで一生懸命なのは周りにも伝わっていて、
周りのみんなは温かい目で見守っている。



そんないつものような光景が見られる平和病院に、
小学校の階段から落ち大怪我をした男の子が運ばれてきた。



名前は「昌夫」。



そのまま入院することになった。それから1週間後の平和病院屋上。
新人看護師リオナと昌夫の母親2人がなにやら話している。



「この紙に書かれていることをよくお読みください。」



「え?契約書?何これ?・・・本当にこんなことができるんですか?」



「はい。明日のサッカーの試合に出させてあげたいんですよね?100万円でいかがですか?」



「わ・・わ・・・分かりました。明日までに用意してきます。」



さらに1週間後、平和病院屋上にはリオナと本田小次郎が。



「この紙に書かれていることをよくお読みください。」



「・・・・・で、親父の末期ガンの治療はおいくらですか?」



「ご存じのとおり、小五郎さんの場合、かなりガンが進行しておられます。
 治療は困難を極めますので、1000万用意していただければ治すことができます。
 どうなされますか?」



「・・・分かりました・・・・・早急に用意しますので、よろしくお願いします。」



看護師として平和病院に入職して約1年、月に2回ペースで能力を使い、
もらったお金は全て自分の財布に入れているリオナ。



常磐院長はこのことに気づいていたが一切口出しはしない。
病院内のスタッフがこの状況に気づきそうになると、
マスコミにかぎつけられたらうちの病院の評判にもつながる、
という最もらしい理由をつけ、外部には絶対に漏らさないよう釘をさしていた。



あの日。看護革命研究会が解散したあの日。



-------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「・・・リオナが去った今、それが一番いいな。
 では私が医療関連で寄付してもよさそうなところを何か所かリストにして用意しておくから。」



「わかりました。院長。ご連絡お待ちしています。」



「・・・それとも・・・今ここで、君と半分ずつ持ち帰って・・・
 お互い好きな団体を選んで寄付することにするか?」



「・・・院長・・・分かりました。そうしましょう。」

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------




院長はリオナのやることには何も口は出せない。
出したら最後、看護革命研究会での日々をばらされて、
医療関係者としての人生はそこで幕を閉じることになる。



それだけでなく、リオナの能力の秘密をばれないように裏工作までする必要があった。



特に、牧田健二からは目を離さないようにしていた。
初めてリオナが院長に面会した日、能力の実験台となった牧田。



今までに治療してきた患者たち・その家族たち以外で、
能力のことを知っているのは「リオナ・徹・院長・牧田」の4人だけだからだ。



しかし、牧田は院長のことを信頼し、忠誠を強く誓っている医師の1人であったため、
念のため注意しておくか・・・という程度であった。



時には、リオナの能力がばれないようにするための会議の際の、
セリフが書かれた台本を渡されたりもした。



牧田はその院長の指示に忠実に従っていた。



リオナはというと・・・1人でやりたい放題やっていた。
見えないところで強力な守り神が守ってくれているようなものだったからだ。



病院内では、能力のことがばれないよう、あえて、
おっちょこちょいなキャラを演出したりもしていた。



周りの人間は誰も、このリオナがそういった能力を持っていて、
ましてやお金を患者から巻き上げているなど予想もできないだろう。



仕事が終わり、病院から5分ほど歩いたところで
タクシーをつかまえ、自分の部屋へと帰っていくリオナ。



看護師が毎日タクシー通勤しているというのは、どう考えても怪しい。
わざと病院から離れたところからタクシーに乗っているのだ。



そのあたりでは家賃が高いと有名な高級マンションの下でタクシーから降りてくるリオナ。
エレベーターでは最上階のボタンを押す。



部屋に入るとワイン片手にお出迎えする向田進似の男が。



「おかえり、リオナ。今日もお疲れ様。」



「今日、1000万決めてきた。」



「すごいじゃないか!おめでとう!乾杯しよう!」



リオナは心からこの能力を誇りに思うようになっていた。
そして、その思いは次第に、能力を目覚めさせてくれた徹への愛へ変わっていった。



徹は大学を中退。そのままリオナと同棲生活を始めた。
仕事はしていない。世間一般的には、この徹の状態を「ヒモ」と呼ぶ。



2人は毎日幸せだった。愛する人と一緒にいられ、欲しいものは何でも手に入る。
2本目のワインのコルクを抜いた瞬間。



「ピンポーン」



インターフォンのカメラには牧田健二が。
病院関係者はリオナがこのマンションに住んでいることを誰も知らないはずだ。
常磐院長ですら知らないはず。



ということは、尾行されていたということになる。
2人は嫌な予感がしたものの、このまま居留守でやり過ごしても、
牧田はまたやってくるに違いない。



徹は念の為、奥に隠れておくことにした。
ドアを開けるリオナ。



牧田は汚れのない真っ直ぐな瞳でリオナを見つめながらささやいた。



「一緒に看護革命を起こさないか?」



看護師ミステリー小説「耳たぶを看護させて」 完



「耳たぶを看護させて」編集後記



最後まで、こんな素人の書いた小説?を読んでもらってありがとうございました。
少しは楽しんでもらえたでしょうか?



書いてる自分的には、本当に楽しかったです。
加えて、小説を書いてる間は、家でくつろいでいても、友達と飲みに行っていても、
気づけば小説の内容を考えていて、それがしんどくなってきて、
さっさと終わらせたい・・・という気持ちにもなりました。



そして、あらためて、プロの小説家の人とかドラマ・映画の脚本家の人とかは、
本当にすごいんだなーと思いました。



では次回作でまたお会いしましょう。



次は小五郎さんに負けないように自主制作映画を作ります。



<<12th Operation