本編

6th Operation 「覚醒」

ゴールデンウィーク明けの火曜日。
このころになってくると、看護学科の中でも何人か仲の良い友人ができ始め、
ランチやその他の行動を共にするようになっていた。



大学の授業が終わると、1人の友人が誘ってきた。



「リオナー今日これからK大学の子達とコンパがあるんだけど来ない?」



「え?!あのK大学とコンパ?!うーん。行きたいけど・・・
 今日はちょっと用事があって・・・残念!また誘ってね!」



「了解ー。じゃあまた明日ね!バイバイ!」



リオナは大学を出ると、あの603号室へ向かう。
あれから迷いはしたものの、何度か鷲見徹と話すうちに、
看護革命研究会へ参加することを決めたのだった。



看護師になるのがリオナの夢。その夢の職業「看護師」を
もっとより深く理解するためにも、看護革命研究会に入っておくことは
自分にとって必ずプラスになるというリオナなりの判断だったのだ。



とはいえ、今はまだ、鷲見徹とリオナの2人だけのサークル。
2人とも看護については勉強し始めて1か月程度の素人もいいところだ。



鷲見徹もえらそうな物言いを最初はしていたが、
実際には看護業界の問題点の本質を何1つ分かっていなかった。



そこで、まずは看護業界にはどういう問題点があるのかを、
本や雑誌、インターネットなどで調べるところから、
看護革命研究会の活動はスタートした。



「調べれば調べるほど、これからの看護業界・・・
 っていうか日本の医療は大丈夫なんかな?って思うんけど・・・
 徹くんはどう思う?」



「同感。高齢化がどんどん進んで行って10年後・20年後とかホントやばいね。
 てか俺らが革命起こすから大丈夫なんだけどね(笑)」



「ねえ、いつも思うんだけど・・・その根拠のない自信はどこから来るの?」



その後、いつものように3時間ほど看護業界の問題点について調べ、
2人とも帰ろうとして外に出ると・・・
バケツをひっくり返したような雨が。



さっきまであんなに晴れてたのに。
最近こういうゲリラ豪雨が多くて困る。



603号室には前から置きっぱなしの傘が一本だけある。
リオナは徒歩10分の最寄り駅まで、徹は逆方向へ徒歩15分の自宅へ帰る予定だ。



「じゃあレディーファーストってことで。傘どうぞ。」



「え?こんなどしゃぶりの中15分も歩いて帰るの?」



「帰ってすぐシャワー浴びるし。問題なし。」



「・・・じゃあ傘借りてくね。ありがと。風邪引かないようにね。」



「そっちも。こんな雨だから傘さしてても濡れると思うから。気を付けて。」



そう言って徹は大雨を気にするそぶりも見せず、元気よく走り去っていく。
リオナは逆方向へ傘をさしてゆっくりと歩いてゆく。



徹の言った通り、この大雨では傘をさしていても
下半身半分くらいは嫌でも濡れてしまう。



普段はスカートやワンピースのコーディネートが多いリオナ。
今日はたまたまジーンズだったことに助けられた。



朝出かけるときに、お気に入りのスカートをはこうとしたのだが、
なぜか気が変わってジーンズに履きかえていたリオナ。
子供のころからの第6感が働いたのかどうかは、本人にも分からないところである。



次の日も、大学が終わると看護革命研究会へ向かうリオナ。
603号室に入ると、すでに徹が本を読んでいる。
リオナも無言で昨日読んでいた本の続きを読み始める。



「ゴホン!ゴホン!・・・ゴホン!ゴホン!ゴホン!」



徹がやたらとセキをしている。



「風邪?」



「いや、ちょっとつまっただけ・・・ゴホ!ゴホン!」



「ちょっとおでこ触らせて・・・熱あるじゃない!
 こんなとこで本読んでないで、帰って寝といたほうがいいんじゃない?」



「こんくらい大丈夫だよ。一晩寝れば治・・・ゴホン!ゴホン!」



「・・・あっ・・・もしかして昨日私が傘とっちゃって・・・濡れて帰ったから?私のせいね。」



「いや、それは関係ないよ・・ゴホン!ゴホン!



リオナは自分のせいで徹に風邪をひかせてしまったと罪悪感を感じた。
早く治るといいな・・・と思った瞬間。



砂浜で血まみれになって倒れている自分の姿が頭の中に浮かび上がった。



次の瞬間、リオナは無意識に徹の耳たぶに5秒間キスをしていた。



「おいおい!いきなりなんだよ!そういう性癖かよ!ビビるわー!」



「・・・風邪・・・もしかして治ってる?」



「そんな急に治るわけ・・・あれ?・・・うん、治ってるっぽいわ。」



「嘘・・・信じられない・・・だとすると・・・」



「だとするとって何だよ!ちゃんと説明しろよ!」



リオナは徹に中学3年の夏に起きた、あの海の出来事を細かく話した。
加えて、自分が子供のころから、少し離れた場所にある
神社・お寺・お墓の場所がなんとなく分かること、第6感が働くことがあること、
昨日の朝にスカートを一度はきそうになってジーパンに履き替えて、
雨から足を守れたことなどを話した。



しばらく徹は黙っていた。
いつもの自信に満ちあふれた表情はそこにはない。
言葉を選ぶようにして徹は静かに口を開く。



「お前さ・・・中学校3年生から今日までの間に・・・
 誰かの耳たぶに5秒間キスしたことあるか?」



「お前って誰に言ってんのよ!耳たぶにキスされたからって恋人にでもなったつもり?!
 あれはあなたの風邪を治すために・・・」



「いいから答えろ!大事なことなんだ!」



「ええっと、、、ないよ。高校の時に彼氏とじゃれ合ってて、
 その時に耳たぶをペロってなめたことはあるけど、たぶん5秒もしてない。」



「お前って・・・意外と・・・そっちの方の経験豊富なんだな・・・」



「だーかーらー。お前って呼ばないでって!」



そう言いつつ、お前と呼ばれても正直あまり違和感を感じないリオナ・・・



「もう1つ。その海の日の不思議な出来事を知ってるのは、、、両親だけ?」



「両親と・・・あとは、運ばれた病院のお医者さんとか看護師さんとか、、、
 砂浜に野次馬で集まってた人たちはたぶん傷が治ったことは分かってないし、、、」



「両親には、その夢の話はしたの?耳たぶにキスする夢を見たっていう話。」



「ううん。してない。私もその日ビックリしてて、ただ呆然としてて。
 それから言うタイミングもなくって特に会話にも出なかったし。
 でもお墓の場所当てれたりとか、第6感が働くことがあったりだとか、
 私に霊感?のようなものがあることは知ってるよ。」



「つまり・・・リオナが耳たぶに5秒間キスをすると、
 その人の怪我や病気を治せる能力を、中3の夏に身につけていたかもしれないということ。
 そして、この能力のことを知っているのは、今のところ俺とリオナの2人だけってことだな。」



「ちょっと待って。さっき徹君の風邪は治せたかもしれない。
 けど、他の人の怪我や病気も治せるかどうかは・・・」



「確かに。偶然治ったかもしれない。一度きりの能力だったかもしれない。
 だから他の人でこの能力を実験してみないか?」



「・・・実験って言っても・・・耳たぶに5秒もキスするんだよ?
 能力のこと説明してからじゃないと、親しい人じゃないと無理だよね?
 説明したとしても誰も信じないと思うよ。



 何言ってんだこの人・・って気持ち悪がられるだけだよ。
 それか・・・寝てる人に実験するとか?」



「実験台には1人あてがある。」



「・・・え?・・・誰?」



「俺の親父。」



6th Operation「覚醒」完  >>7th Operationへ続く



6th Operation「覚醒」編集後記


当初の予定では、次の7話くらいで終わる予定でしたが、まだまだ続きそうです。


ドラゴンボールは当初は単行本7巻のところで終わる予定だったそうです。
と、誰かから聞いた覚えがあります。


それがあんなどえらい壮大な物語に・・・
セルや魔人ブゥは出てきませんが、この物語もあともう少しだけ続きます。


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