本編

3rd Operation 「院長命令」

小五郎の末期ガンがいきなり完治してから2日後の朝。



平和病院の院長「常磐公平」は、各科の医長をしているドクター5人を
緊急カンファレンスと称して院長室へ集めた。
小五郎・昌夫の突然の完治・退院をうけての話のようだ。



「知っている者もいると思うが、、、
 2名の患者が奇跡的な回復を見せて退院していった。
 病状からして、普通ではありえない回復だ。医学的には説明できない。



 1名だけならまだしも、2名連続で起きている。
 しかもこの2件の間隔は1週間程度だ。



 もしこの1、2週間で、病院内で不審な者を見た、
 いつもと何か違うことがあった、感じた、
 ということがあれば教えてくれないか?どんな細かいことでもいい。」



平和病院の院長「常磐公平(とぎわこうへい)」。55歳。



患者さんのことを一番に考えるだけでなく、ドクター・ナース、
その他病院内で働くスタッフ全員のことを常に親身になって考えてくれるため、
院内の全てのスタッフに慕われ、理想の院長だ!
と尊敬の念を抱いているドクターも少なくない。



噂では、常磐院長のもとで働きたいと、
優秀なドクターが大学病院の医局のしがらみを無視して
他の病院から移ってきたがる話も、頻繁に舞い込んでくるという。



1人のドクターが手を挙げた。
昌夫を担当していた整形外科の牧田健二ドクターだ。



「院長!おっしゃりたいことがよく分かりません!
 不審な者?とは?・・・
 院長は今回の2名の回復をどう捉えてらっしゃるのでしょうか?
 まずは院長の考えをお聞きしたい!」



「・・・・・牧田君の言う通りだな・・・話が急すぎた。
 では、先に私の見解を話しておく。あくまで私の想像?妄想?だからな。



 今回の2名。医学的にその回復がありえない。
 であれば、もはや、超能力?的な存在を信じるしかないのではないか?これが私の見解だ。」



「・・・・・・」



超能力って・・・
医者の理想像とも言える院長の発言としては信じがたいような見解・・・・・



室内に一瞬異様な空気が流れた。
しばらくして、ここでもやはり牧田が口を開いた。



「超能力?的な存在???・・・・・では院長は、、、
 超能力を使える何者かが、2名の病気を治した・・・
 とでもおっしゃるんですか?」



「・・・それ以外に考えられんだろう。
 超能力者?という人間がこの世にいるかどうかは知らんが・・・・・



 話を戻すぞ。この2週間の間、病院内でいつもと変わったことがあったり、
 不審な者を見かけたりはなかったか?
 どんな細かいことでもいいから、ここで発言してくれ。」



「・・・・・・・・」



「そうか、特に思い当たることはないようだな。わかった。
 あと・・・この2名の回復については、絶対に他言するな。
 病院内・病院外に限らずに絶対だ。家族・友人にも言わないように。



 マスコミにかぎつけられたら面倒なことになりそうだ。
 もうすでにかぎつけているマスコミもいるかもしれないからな。



 マスコミの人間が今回のことで個別に何かを聞いてきても、ノーコメントで通すんだ。
 すでに知っているナース達にも、絶対に他言しないように釘をさしておいてくれ。」



「院長、お言葉ですが、、、
 マスコミには今回のことは告げても問題ないのでは?
 何らかの医療ミスがあって病状が悪化したり死亡者が出たというような、
 ネガティブな問題ではありません。



 むしろ逆で、病状が回復したんですよ。
 正直に報告し、記者会見を開くなどしても、何の問題もないのでは?
 むしろ、どんな病気でも治すことができる!というような、
 病院のイメージアップにもなるのではないでしょうか?」



「牧田君・・・冷静になれ。それは考え違いもいいところだ。
 『末期ガンの患者のガンが一晩で消えた病院の謎』
 とでも見出しがついて、ワイドショー・週刊誌が面白がってネタにして、
 ありもしないことを根掘り葉掘り書くに決まってる。



 マスコミっていうのはそういうもんだ。
 うちの病院にとっては、間違いなくこれはマイナスになる。
 とにかく絶対にこのことは内密にしろ。
 これは院長命令だからな!」



「・・・・・了解しました。」



カンファレンスが終わり、ドクターたちが各病棟に戻っていく。
牧田健二をはじめ、全員ぼーっとして上の空の顔をして院長室を後にした。
驚くというよりも、「なんなんだこの状況は・・・」と呆然としている様子だ。


それは常磐院長も同じはず。
しかし、院長はすでにこの問題と冷静に向かい合っていて、
今するべきことを淡々と進めている。
牧田はカンファレンス中、少々興奮して的外れな発言を連発してしまった自分を恥じていた。



加えて、あの院長が「院長命令」という言葉を使ったことに、事の重大さを感じていた。
常磐院長は、普段は、どんなことでも上からは絶対にモノを言わない人。



常にスタッフの気持ちを考え、「君はどう思う?」とか
「だったら、こうしようと思うが、どうだろうか?」というモノの言い方をする。



ドクターはじめ院内のスタッフ全員に慕われていて、
「よし、この人のために頑張ろう。」
と思われている要因の1つがこの物腰の柔らかさなのだろう。
北風と太陽で例えるならば、院長は完全に太陽だ。



その院長があえて「命令」という言葉を使って強く言ったのだ。
だからこそ、牧田をはじめカンファレンスに参加した5名は絶対に他言はしないだろう。



牧田はすぐにナースステーションへ向かい、手の空いているナースたちを集めた。
リオナや玲子もその場にいた。



「院長からの伝言だ。
昌夫君と小五郎さんが驚異的な回復をして退院していったのは、
知っている者も多いと思うが・・・このことは絶対に他言しないように。
家族や友人にもだ。これは院長からの命令だから必ず守るように。



院長はマスコミにかぎつけられて、事が大きくなるのを心配していらっしゃる。
誰にも言わないようにとのことだからよろしく。」



リオナは背中に、いつもとは全く違う種類の汗がたらっとたれていくのを感じた。



3rd Operation 「院長命令」完  >>4th Operationへ続く



3rd Operation 「院長命令」編集後記


1年半ほど前から、私にも仕事で部下ができました。


仕事を教える毎日なのですが、
たまに、こっちが何かを教えてもらっているような感覚になることも多いです。


まだまだ未熟な上司です。部下と一緒にもっともっと成長していきたいです。
ちなみに私も常磐と同じく「太陽」です。


北風の要素も取り入れなければ・・・と考えたこともありましたが・・・
疲れそうなのでやめておきました。。。


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